◆野田版 研辰の討たれ◆シネマ歌舞伎

2008–01–17 (Thu) 22:09
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■作■…木村錦花  ■脚色■…平田兼三郎  ■脚本・演出■…野田秀樹

■配役■
【守山辰次… 中村勘三郎】 【粟津奥方萩の江/姉娘およし… 中村福助 】
【妹娘おみね… 中村扇雀】 【平井九市郎… 市川染五郎 】 
【平井九市郎… 市川染五郎 】【平井才次郎… 中村勘太郎 】
【からくり人形/番人番五郎… 片岡亀蔵 】 【職人市助… 中村源左衛門 】
【宮田新左衛門/やじ馬の町人… 中村七之助 】 
【小平権十郎/やじ馬の町人… 中村獅童 】 
【八見伝内/宿屋番頭友七… 坂東弥十郎 】【町田定助/僧良観… 中村橋之助 】 
【平井市郎右衛門… 坂東三津五郎 】

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【概要】
木村錦花原作の歌舞伎狂言「研辰の討たれ」を、野田秀樹が新しい視点で書き直し、演出した舞台。平成13年8月の納涼歌舞伎で初演され、大ヒットとなりました。平成17年5月歌舞伎座において、十八代目中村勘三郎襲名披露狂言として再び上演された舞台が、シネマ歌舞伎としてよみがえります。

【物語】
赤穂浪士討ち入りのニュースは、江戸から離れたここ近江の国、粟津藩にも伝えられ、剣術の道場はその話題で持ちきりです。しかし一人だけ、赤穂浪士を馬鹿にする人物がいました、もと町人、研屋あがりの守山辰次です。仇討ちなんて馬鹿馬鹿しい、武士といえども潔い死を望まない武士もいる筈だと言い出す辰次を、家老の平井市郎右衛門が叱り付けました。すると現実的で抜け目ない辰次はすぐに態度を変え、剣術に優れた市郎右衛門に剣術を学びたいとお追従を言う始末。主君の奥方、萩の江の前で、市郎右衛門に散々に打ち据えられて、辰次は仕返しに一計を案じますが・・・
シネマ歌舞伎HPより引用 

【野田版 研辰の討たれ】…銀座 東劇にて2008.02.1迄上映中です。


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武士は脳卒中では死なーん

…というあの名台詞がスクリーンに蘇ってきました。
この研辰(とぎたつ)は、去年、勘三郎さんの襲名記念公演として歌舞伎座で再演された演目なのですが、自分は、あり得ない事に

……知らなかった……

という実にシンプルかつ間抜けな理由で、見はぐってしまったわけです。なんと言いましょうか、ボーッとした性格、マメでない性格、詰めの甘い性格が、時としてこういった大ポカをやらかしてしまう訳ですが、今回、映像として見る事が出来て本当に嬉しかったです。
普段劇場で、まわりに気を使いながら見るのと違って、映画館のフカフカの椅子の中で、ポップコーンをモシャモシャ頬張りながら見る舞台は、リラックスした雰囲気があって楽しかったです。

今思い起こせば、野田さんの演目を見たのも、歌舞伎座デビュー(笑)したのも、歌舞伎役者を生で見たのも。この演目が初めてでした。
初演の公開時に、研辰の稽古現場をテレビで放送していて、その光景を見ていたら、何かが漂ってくるわけですよ、“に・ほ・い”が(笑)これは、見て置いた方がいいかなと思い、券も無いのに、衝動にまかせて歌舞伎まで乗り込んで行ったっけ。

歌舞伎座に行く前迄は、とにかく堅い場所だという、出所不明の潜入感があったんだけど、実際に行ってみると、物凄く人の活気に満ちた場所だという事が解りびっくりしました。
劇場入口付近で、お客を捌いている劇場のおじさんたちも、穏やかかつ丁寧な接客をする人達で、ホッさせられるもんがありました。

「お前、あきらかに初心者だろ?」

なんて、オーラが出まくっていたか、否かは、定かではないが(笑)、開演前、システムが今一解らなく、挙動不審にウロウロしていた自分に、笑顔で声をかけてきてくれて、幕見の事とか、その他色々な事を教えてくれました。大体、「研辰」って漢字も読めないくらいの超ド級の初心者だったのだ。(←おじさんに読み方を教わった)
この研辰を初演で見た時の感動は、今でも忘れられないもんがあって、

「好き勝手にやって何が悪いんじゃ〜」

なんて言わんばかりの爆走感みたいなもんが舞台全体に充満していて(ラストがちょっと切なめですが)この作品を見てから、歌舞伎役者に対するイメージがガラっと変わりました。初演の時よりも、再演の時のほうが悪乗り感がUPしていたような気がするが、演じる側に技術と品があるので下品な感じにはならなかったりする。

まず、シェイクスピア劇真っ青の“立板に水”的な膨大な台詞の量と、運動量をこなす、勘三郎さんの年齢を感じさせないタフさ加減には、ビックリするもんがあった。
機関銃のように喋りまくり、毬のようにぽんぽんと舞台の上を動きまわる勘三郎さん演じる辰次を見ていると、大愚に徹する事の出来る人間の尊さというものを、再認識させられたような気がしました(笑)。
仇討ちが美徳とされていた時勢に

「仇討ちなんて、ただの人殺しじゃん」

なんて言えるのは、バカの特権なのだ(笑)。バカには、時空や国境を超えた普遍的な真理が宿っているとでも言いましょうか、普段はちゃらんぽらんで、いい加減な辰次だけど、殺される寸前まで一貫してこのような考えを貫いていたような所があって、中途半端に小賢しい人間よりも、よっぽど堅いのではないかと、思ったりもした。単なる根性無しって話も有りますが(笑) まぁ、死んでくれたほうが、世の中の為になるんじゃないかと思うくらいの悪党って沢山いるけど、だからと言って、仇討ちという行いが、美徳として世間一般的な価値観になってしまうのは、おかしな事だと思う。正義と言う単語に、お墨付きが付いた途端に、その正義が個々の理屈によって暴走 し始めたら行き着く先は殺し合いだもんね。殺人という行為をいくら美麗字句で表面を覆ったとしても、それをやってしまったら、やっぱ心のどっかに暗点は残るよね。 まぁ理屈で恨みが消えれば、人は皆“仏”になれちゃうわけで、そのへんの事は難しいです。
それと同時に、自身の自己顕示欲を満たす為に、美徳とか、正義とか、賞賛とか、そういった単語にピンポイントに反応して、人様のいざこざに首を突っ込んで、煽ってくる身勝手な大衆の姿もシニカルに描かれていたりして、ただのコメディーではない奥行きの深さも感じました。
その他にも見所満載な演出が沢山施されている舞台でして、 ざっと例にあげますと、

●オープニング、影絵として写し出される赤穂浪士の討ち入りのシーンから、
 道場に変わっていくシーンとか、

●染五郎さんと、勘太郎さんの、道場での高速チャンバラシーンとか、

●可愛くないからくり人形とか(強烈です)

●ウェストサイドストーリーの振りを入れた場面とか、

とまぁ、色々あって、爆笑の連続です。兎に角、ストーリーは面白いし、脚本は面白いし、そして何よりも役者陣が最高の仕事をしております。
初演の初日に歌舞伎座では起こった事のない、スタンディングオベーションが沸き起こったというのも頷ける舞台です。大勢の人に見てもらいたいな。


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